2026/7/14
建築家・安藤忠雄氏の話に、これほどまで心を突き動かされるとは思わなかった。
建築家を目指す学生たちのために、建築家の芦澤竜一氏と平沼孝啓氏が立ち上げた「建築レクチュアシリーズ217」。2010年から続くこの非営利の活動は、学生が主体となって運営され、登壇する建築家も皆、手弁当で参加しているという。年の瀬も押し迫った12月22日。満席の会場は、ゲストである安藤氏の圧倒的な語り口に飲み込まれ、一時間半という時間は瞬く間に過ぎ去った。
安藤氏は、今の日本の現状を憂いていた。
かつて世界に誇った存在感は影を潜め、国際的な地位は低下の一途をたどっている。その要因は、日本人が物事を「考えなくなってきている」ことにあるのではないか――。
この停滞を打破する鍵は、どこにあるのか。安藤氏は、シンプルかつ力強い言葉を投げかけた。「面白いと思えることを探し、実行せよ」と。
私たちはつい、安定を求めてしまう。しかし、安定の中に安住していては、豊かな発想など生まれるはずもない。見たことのない世界を見るためには、自分という軸をしっかり持ち、世の中の「面白い」に好奇心を全開にする必要があるのだ。
情報の取り方一つとってもそうだ。徳川家康は1607年にはすでに世界地図を手にしていたという説がある。時代を動かす者は、いつだって情報に対して貪欲だ。年齢に関わらず、世界に目を向け、自分の中の情報量を増やし続ける姿勢が欠かせない。
そして何より、「面白いやつと付き合うこと」だ。
仕事は一人では完結しない。だからこそ、誰と付き合うかが人生を決める。面白いことを企む者たちと出会い、互いに響き合い、影響を与え合う。その反響の中にこそ、発想力は磨かれる。そのためには、自分自身も確固たる考えを持ち、相手に「次の面白い提案」を投げかけ続けなければならない。
考えることを止め、足踏みしている余裕はない。たとえ失敗して転んでも、立ち上がりさえすればそれは前進になる。チャレンジを止めた瞬間に、行動は止まってしまうのだ。
安藤氏の言葉は、経済性や機能性といった合理的な枠を超え、聴く者の心に深く突き刺さった。
「自分にしかできない道を、考え続けろ」
会場全体を鼓舞するその熱量に、私は一人の人間としての強固な「人間力」をまざまざと見せつけられた気がした。
(文/山田郁二)