昨日、d news aguiで「あぐいの美塾2026」が開催された。ゲストにストップモーションアニメの第一人者である八代健志監督を迎えたその講演は、劇場版「ごん -GON, THE LITTLE FOX」の制作の裏側を通じて、阿久比の風景の美しさを余すところなく表現した、実に印象深い時間だった。
ストップモーションアニメとは、1秒間に12枚の静止画をつなぎ合わせて動画(アニメーション)にするというもの。1カットづつのクオリティのこだわりが半端ない。
監督ご本人を含め、わずか10名程度のメンバーで一つの作品を作り上げているという。人形づくりから風景のセット、アニメーションに至るまで、そのすべてに監督自らが深く携わっているとのことだった。その話を聞く中で、特に心に残り、ひとのマネジメントにも通じるものがあると感じたのが、「画材と素材」という独自の視点である。
人形やセットを制作するにあたって、八代監督は材料を「画材」と「素材」に分けて捉えている。
画材とは、性能が高く、極めて従順な材料のことだ。扱いやすく計算が立ちやすい一方で、それ自体の持つ強い魅力や面白みは乏しい。これに対し、素材は、一筋縄ではいかず言うことをきかないが、圧倒的な「味」がある材料である。使いこなせなければ単なる「アラ」になってしまう難しさを持っている。
映画『ごん』の制作においても、そのこだわりは徹底していた。ストップモーションアニメには本来不向きとされる「本物の水」をあえて使用し、あえて流れをつくることで、水面の陰影や川底の屈折による見事な遠近感を表現したという。すすき一つをとっても、穂先の形状にこだわり抜き、ミニチュアサイズでありながら先細る自然の風景を臨場感たっぷりに映像に定着させている。また、人形の顔づくりにおいては、扱いやすい粘土ではなくあえて木を選ぶことで、年配のキャラクターが持つ風格や複雑な表情を引き出している。木の持つ粗野な味わいがあってこそ、その年齢が重ねてきた重みが表現できるのだ。
この制作のあり方を見つめているとき、組織のマネジメントも全く同じではないかという思いが胸をよぎった。
学校教育やこれまでの組織運営は、指示されたことを正確に、従順にこなす人材を育成することに重きを置いてきた。指揮命令系統は整えやすく、一定の生産性も確かに上がる。しかし、それだけでは仕事に厚みは生まれない。
ビジネスにおいても、言われたことをミスなく遂行できる人材は確かに「画材」のように貴重な存在だ。だが、それだけではどこか均質で、深みのない組織になってしまう。逆に、扱いづらく一癖あっても、人と違った強い魅力や尖った才能を持った「素材」のような人材がいる。その扱いにくい人材が存分に活きる場所や役割を与えられたとき、組織の力はぐっと底上げされるのではないだろうか。
効率や従順さばかりが求められがちな現代において、人と違う部分を「アラ」として切り捨てるのではなく、その個性や魅力を探し出し、活かせる環境をどう整えるか。それこそが、これからの仕事や会社を、他にはない唯一無二の存在へと高めていくカギになるのではないだろうか。
(文/山田郁二)