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ブランドの戦略を考えるとき、「コーポレートブランド」と、その傘下で展開される「アンブレラブランド」の関係性は極めて重要だ。

企業そのものの信頼や安心感を担保するのがコーポレートブランドの役割なら、特定のターゲットに対し、具体的な便益を届けて「自分ごと化」させるのがアンブレラブランドの役割である。

両者が相乗効果を発揮すれば、同じ機能なら信頼できる企業のものが選ばれるという「最後の一押し」になり、個別のブランドが愛されるほど、企業全体に「好感度の貯金」が蓄積されていく。

ただし、ここで注意すべきは両者の目指す方向性だ。

もしコーポレートブランドが守ってきたイメージと、個別ブランドが提供する価値が矛盾していれば、互いの価値を打ち消し合ってしまう。例えば、高級ブランドが安易に低品質な安価ブランドを展開すれば、たちまち「ブランドの希釈化」を招き、企業の信頼は失墜するだろう。

では、カリモク家具という高級家具メーカーにおいて、決して「高くはない」ブランドである「カリモク60」はどう位置づけられるのか。価格差があることで、企業の信頼は損なわれるのだろうか。

結論から言えば、その答えは否である。

カリモク60は、母体である企業から「確かな技術と歴史」という信頼を借りつつ、企業に対して「現代的なセンスと新たな顧客接点」という大きな価値を返している。

かつて、重厚でコンサバティブな高級家具店には足を運ばなかった若年層やデザイン感度の高い層に対し、カリモク60はブランドの入り口としての役割を果たした。「古くて良いものを大切にする」「普遍的なデザイン」という瑞々しいイメージを企業全体に付与し、メーカーとしての固定観念を「時代を超越する存在」へとアップデートさせたのである。

ここで最も重要なのは、「価格の差」はあっても「哲学の差」がないことだ。

これが、ブランドの希釈化を起こさない最大のポイントである。カリモク60がどれほど手に取りやすい価格であっても、その根底に「家具を長く大切に使う」というカリモク本来の哲学が流れている限り、企業の価値は損なわれるどころか、より強固なものへと昇華される。

ブランドを繋ぎ止めるのは、価格の多寡ではない。

「何のためにそれを作るのか」という、深く、揺るぎない思想の共有こそが、ブランド戦略の真髄なのである。

(文/山田郁二)